建築を巡る民事紛争へのリスク管理について

1.阪神淡路大震災、耐震偽装事件後の建築を巡る民事紛争

平成7年1月に発生した阪神淡路大震災を契機として欠陥住宅問題がクローズアップされ、建築物の構造に関し、建築基準法施行令が改正され、各種の告示が制定されたほか、平成12年4月から住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)が施行され、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵担保期間の延長がなされました。

さらに、平成17年11月に発生した耐震偽装事件を契機として、平成20年4月から特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律(履行確保法)が施行され、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵については、住宅瑕疵担保責任保険等により住宅購入者等が保護されるようになりました。

また、法解釈においても、従前は見解が分かれていた建替費用相当額の損害について最高裁はこれを正面から認めたほか(最判平14.9.24)、建築確認の際に工事監理者として名義を貸すのみで実際には工事監理業務を何ら行わない名義貸し建築士に対しても一定の場合には不法行為責任を負うとの判断をしました(最判平15.11.14)。さらに、今まで長期間にわたって議論されてきた建築に関わる者の不法行為責任についても、建築業者は、契約関係にない者との関係においても、基本的安全性を損なう建築物を建築した場合には、不法行為を構成し、これに基づく損害賠償責任を負うとの判断をしました(最判平19.7.6、最判平23.7.21)。

そのほか、専門家責任もクローズアップされるようになり、説明義務違反を理由とする損害賠償が認められたり、契約書のない追加・変更工事に基づく追加・変更工事代金請求についてこれを否定しないし厳格に判断されたりするようになりました。


2.消費者が紛争処理手続を利用する機会の拡大

他方、紛争処理手続面に関しても、品確法の制定に伴って、評価住宅を対象とした弁護士会での住宅紛争審査会が新たに設けられ、履行確保法の制定に伴って、これが保険付住宅にも拡大されました。

この弁護士会での住宅紛争審査会は、1万円程度の申請料で申し立てることができ、その審理にあたっても弁護士及び建築士が調停委員等となり、必要に応じて現地調査も行われることから、住宅購入者等にとってとても使いやすい紛争処理手続となっています。

3.将来の紛争に備えた対応をすることの重要性

弁護士会での住宅紛争審査会では、住宅購入者が申立人の場合には販売会社がその相手方となりますが、当該住宅を施工した施工会社も参加するのがほぼ通例となっております。

したがって、建築業者としては、今まで以上に、住宅購入者等から各種の住宅紛争処理が申し立てられることを想定し、日ごろからこれら申し立てがなされた場合にも適切に対応できるように準備しておくことが必要不可欠であるといえます。

当事務所では、これら建築紛争に精通した弁護士が多数在籍しており、主として建築会社・工務店及び販売会社からの相談を多く取り扱っております。